『狂気の鈴・無狂(むきょう)の鈴』
魔力で創った黒い鈴「狂気の鈴」を鳴らすと、その音を聞いた者の心は狂気に満ちる。
また、白い鈴「無狂の鈴」を鳴らすと、聞いた者の心に満ちる狂気は浄化される。
一人称:僕
【僕達はね、気が遠くなるほど生きてきたんだ‥甘く見ないでね?】
名前:ルビー・エクシュール(るびー・えくしゅーる)
年齢:不詳(外見年齢20。実際は気が遠くなるほど生きている)
性別:男性
性格:誰に対しても敬語。
怖いことや惨い事も平気。実は死神。
容姿:サファイヤ同様、黒い服に黒いブーツ、更に黒いマントを羽織っている。
違いは髪の色(ルビーは後ろで束ねている)、瞳の色が左右対称になっていること、翼の色。
装備:大鎌
一人称:僕
【我らは死神だ‥我らの目の前に現れたことを後悔させてやる!!!】
名前:サファイヤ・エクシュール(さふぁいや・えくしゅーる)
年齢:不詳(外見年齢23。実際は気が遠くなるほど生きている)
性別:男性
性格:一人でいる事を何よりも好み、近づいてくる輩は銀の大鎌で首を切り取る。(身内、友達、飼い主は例外)実は死神。
死神としての仕事が楽しいのか、仕事を終えると薄気味悪く微笑む。
容姿:ルビー同様。
サファイヤは若干マントの裾がぼろぼろで、鎌には銀とサファイアの装飾が入っている。
装備:大鎌
一人称:我
【世界は愉しくて、愚かだわ。こんな世界、私が――殺菌消毒、してあげる】
名前:殺原 美名(さいばら みな)
年齢:500歳(外見年齢20前後)
性別:女性
性格:昔、潔癖症で誰もいれず、何も口にせずで餓死したが、あるきっかけで蘇り、少し性格が狂っている。
少しシャイで、よく分からなく、一般人からみれば狂人とも言えるが、
意外に奥は普通で妹思いなお姉さま。不老不死。
蜜姫を「姫」と呼び、可愛がる。
容姿:眼は本当に薄い水色。髪の毛は白い(白髪ではない)、髪型は長い三つ編み。スラリとしていて、痩せている。
真っ白な半袖の白衣。太股あたりまでの白いヒラヒラしていないスカート(看護婦のような感じ)
口には、少し大きい白いマスクを付けている。
装備:スプレー缶
技:手にスプレー缶を二つ作成し、片一方が、全てを消し去る(消滅霧《ジェノサイドジャスティス》)少しでもこの霧に触れれば消し飛ばされて、再生不能。
もう一方が、全てを固める(固定霧《ジャックジェル》)止血もできれば、少しでも触れれば壊れるというものの全てをとめることも出来る。
発動時、消去霧なら「TYPE-A 消滅霧」といい、固定霧なら「TYPE-B 固定霧」という。
一人称:私
【生きる事は痛み。今までずっと、僕はそう思ってきたよ。間違ってる?】
名前:紫苑(しおん)
年齢:16歳
性別:男性
性格:大人しい。殆どの事に無関心で、話しかけても「ふーん」「そうなんだ」と流す。
その為、クールと思われがち。が、実際は非常に話しやすい。
性格の豹変が激しい。心が脆い一面も持つ。
本当の性格は、本人にも分からない。生きる事=痛み、と信じている。
容姿:甘いマスクを持つ。容姿端麗。
白から水色へのグラデーションのウルフカット。頭頂部が白で毛先が水色。
金の瞳(大きめ)
黒のロングジャケット、白のミストレスブラウス。黒のロングパンツ、ショートブーツ。黒の羽根つき帽子。
特殊能力:『天獄大鎌召喚』
ヘヴンズサイズ(天国の大鎌)、ヘルズサイズ(地獄の大鎌)を操る。
柄の両端に互い違いに刃が付いている。
『ラグナロク(Ragnarok)』
6大元素(火、水、風、地、光、闇)を操る。
空を裂く雷を起こし、その威力は休火山を復活させるほど
一人称:僕
【世界は変わらなきゃいけない。だから、俺達は時計を動かす…!!】
名前:白夢 くるす(しらゆめ くるす)
年齢:17歳
性別:男性
性格:極めて単純、ポジティブ。大雑把で、公共マナーのちょっとした部分が欠けている。(例:フィンガーボールの水を一気飲み等)
容姿:瞳は黒に近い青。髪は薄いクリーム色。
大雑把なせいか、寝癖を治そうとしない。そのせいで出来た結構なクセッ毛を、ヘアゴムで一括りにしている(日によって後ろだったり上にちょこんだったり)
薄手のTシャツの上にファスナー付きの黒のパーカー。ジーパンにスニーカー。(ファッションより機能性重視)
装備:ボウガン
一人称:俺
【…俺の部屋へようこそ。さて‥お前を殺すか生かすかは俺次第なんだけど?どうする?】
名前:肉山 カヂリ(にくやま かぢり)
年齢:800歳(外見年齢14)
性別:男性
性格:人を信用できなくなり、シャイっぽい部分が多々見える。
憎まれ口を叩く方で、少々餓鬼っぽい。人見知りする。
容姿:眼、髪、共に赤い。髪型は、短い一つくくり。小さな可愛らしい八重歯がある。
黄色の半袖Tシャツ。白いひざ下まである半ズボン。
首にナイフのように尖った赤い十字架のネックレス。
装備:赤い十字架のネックレス
技:首にかけている十字架で自分を傷つけ、その血がついた範囲を自分の部屋とし、思いのままにすることができる。
その部屋に死人が入れば、カヂリが思えば生き返らすことも出来る。
代償として、その技を使った後は凄い疲労感が襲い、死人のようになる。
一人称:俺
【無敵の不快逆流、蜜姫の登場なのっ★ボクに向けた世界の不快、全部逆流しちゃえなのっ♪】
名前:殺原 蜜姫(さいばら みつき)
年齢:300歳(外見年齢12)
性別:女性
性格:あるきっかけで性格が壊れ、天使のように可愛い性格をしている(無邪気)
一度自分の不快が逆流してしまうと、世界が破滅するほどの力を発揮する。
大分力が強い為、パンチをされれば吹っ飛ぶ。
美名を「お姉ちゃん」と慕う。
容姿:眼はオレンジ。髪は茶色(小さく三つ編がしてあるが、本当に短い)
長い耳(兎)がついた帽子。しっぽ(兎)が見えている。
オレンジのモコモコした手袋(兎)を装着。オレンジの半袖に、黄色のズボン。
装備:なし(素手)
技:相手の攻撃を全て跳ね返す(無敵モード)
一人称:僕
【NEUTRALITY】
リーダー
【いつの時代も戦争は起こるよ。…今がその時代だとは思いたくもないけどね】
名前:白夢 萩(はくむ はぎ)
年齢:22歳(外見年齢。年齢不詳。本人曰く太古の昔から生きてる)
性別:男性
性格:温厚だが几帳面。明るい。まったくといって良いほど怒らない
容姿:瞳は黒に近い金(暗め)髪は透き通るような青。
生まれつきストレート。大体ショートの髪を、たまに緩く紐で括っている。
赤い牡丹柄の着物に赤い鼻緒の黒い下駄。たくさんの鈴を着物の帯につけている。(歩くたびに鈴が鳴る)
装備:鈴、短刀、弓矢
一人称:俺
【僕は別に世界がどうなろうと構わないよ。常に変わるものだからね、世界は。】
【争いなんて愚かな行為よ。世界の行く末は、どうなるのでしょうか…】
名前:雪音/雪那(せつね/せつな)
年齢:17歳/18歳(外見年齢)
性別:男性/女性
性格:(雪音)何時でも楽天的で、はっちゃけている。
そして姉に似たのか、腹黒い。
物事を伝えるのが苦手らしく、大雑把。お姉さん大好きなシスコン。
売られた喧嘩は必ず買う。キレやすい。
未成年で(見た目)、天使の癖に、お酒やら煙草やらと、結構不良な生活をしている。
(雪那)淑やかで大人しい。神秘のオーラが滲み出ている。
しかし、キレた時は、静かに黒い笑みを浮かべ魔法を放つ。
特殊設定:(雪音)雪那の1つ下の弟で天界の大天使。
また、身体を置いて来てしまった雪那の依り代。雪那に身体を貸すことも。
(雪那)雪音の1つ上の姉で天界の大天使。
先に下界に降りた雪音を探しに降りた所、誤って身体を上に忘れてしまう。
何時も、雪音の後ろに浮いている。
魔力で身体を具現化する事も出来るが、短時間しかもたない。
容姿:(雪音)雪那そっくりの顔をしている。(容姿端麗で女顔)
髪は白銀色のショート。瞳は水色(パッチリしている)
濃い青のタンクトップ、黒のズボン、白のベルト(上着の上から)。白の上着(パーカ風で、前が開閉出来るようになっている)
羽十字がモチーフのペンダントをしている。
雪の様に白い肌。
(雪那)全体的に少し透けた感じ(魂のみなので)
髪は白銀色の腰までのロング。瞳は水色(パッチリしている)
黒のノースリーブワンピース(膝上4cmくらい)
白のふわふわ素材のポレロ。クロスイヤリング着用。
雪の様に白い肌。
特殊能力:(雪音)『太陽の武器』
太陽の弓での攻撃(弓は大鎌にも変化)
『魔法』
光、火、地、闇の魔法が使える。
『吸収』
自分ヘ向けられた特殊能力、魔法を吸収することができる。
『12星座精霊(ゾディアック・フェアリー)召喚』
12星座の精霊を呼び出す事ができる。(ゾディアック・フェアリー)
『翼銀狼(よくぎんろう)変化』
翼を持つ、銀の狼に変身する事ができる。
(雪那)『月の武器』
月の弓での攻撃。(弓は大鎌にも変化)
『魔法』
光、水、風の 魔法。
『吸収』
自分ヘ向けられた特殊能力、魔法の吸収。
『特殊能力自動取得』
半径2kに居る人は魔力の影響により何らかの(人によって違う)特殊能力を得る
一人称:僕/僕
【奇跡って…そんなの無いわ。現実にするのは貴方自身よ。】
名前:凛鳴(りんめい)
年齢:9歳
性別:女性
性格:おっとりしている。
容姿:髪はピンクで、毛先の方にウェーブがかかっている。セミロング
眼は茶色。
淡いピンクのセーターに、濃いピンクのワンピース。
ワンピースは、胸の下辺りに 白いリボンが結んである。長さは膝の少し上くらい。
サイドに赤いリボンが付いた白のキャスケット。
首に同じリボン。
装備:特になし
特殊能力:瞬間移動
時間を止める
一人称:私
【私‥正直、どうでも良いのよ‥でもね、エイダ‥アンタがそこの側に付くなら私も付くわ】
名前:ジル・バレンタイン(じる・ばれんたいん)
年齢:20歳
性別:女性
性格:感情を上手く表現できず、自らの気持ちを表現できない。
その為か、周りから冷たいと勘違いされている。
レベッカを妹のように大切にしている。
容姿:グレーのセーターに、グレーのマフラー。
おおきめのジーパン。白いキャスケット。
緑色の瞳。髪も緑色のストレートでセミロング。
左耳に紫のダイスのイヤリング。
装備:ハンドガン、手榴弾
一人称:私
【ジルが行くなら私も行くよ!だって、親友だもん!】
名前:レベッカ・チェンバース(れべっか・ちぇんばーす)
年齢:18歳
性別:女性
性格:ポジティブ、明るい。
薬品や科学には自信がある。薬を作っては辺りを爆発させる。
容姿:明るめの赤髪。セミロング。黒い瞳。
軽く外側にはねていて、前髪を白いピンで留めている。
ピンクのタンクトップに、白いシャツを羽織っている。
シャツの上から、茶色のベルト。
淡いブルーのジーパン。腰にシャツを巻いている。
耳に青色のピアス。手首に白いブレスレットをしている。
装備:ライフル、薬品(正体不明)
一人称:あたし
00.時計の針は動き出す
雨が降り続けていた。
窓の外を見つめていた刳琉斗はぼそりと呟く。
「…誰かが、泣いてる。動かしちゃ、いけないって」
後に語り継がれることになる物語は、その一言から始まるのだった。
*****
「ねぇ、くるクン。世界は、救われなきゃ…変わらなきゃいけないんだよ」
「…それでも、俺は」
「……それじゃあ、止めない。止める権利は、俺には無いカラ…バイバイだね、くるクン」
「…………」
「また、会えると良いね」
*****
針は動き出した。
01.選ぶべきではなかった選択
世界の中心には、無数の時計がありました。
時計は、時計塔の周りと中で、歴史を刻み続けていました。
---そう、先の戦争が起こるまでは。
戦争で、平和の時計は針を止めました。
救いの時計もまた、針を止めたのでした。
しかし、争いの時計は針を進め続けました。
戦争が終わり、争いの時計は針をとめ、平和の時計が動き出しても、救いの時計は動きませんでした。
どこにでもあるような歴史書を閉じ、萩はため息をついた。
テーブルの後ろにある茶箪笥から、急須を出してくると、黙って茶葉を入れ、ポットの湯を注いだ。
先の戦争で止まったままの時計のせいで、つい先頃、世界は真っ二つに別れた。
ある者は、時計を動かすべきだと考え、ある者はこのままの方が良いと言った。
それこそ、戦争に突入しそうな勢いだ。
実際、平和の時計の針は速度を落とし、今にも止まりそうだったし、争いの時計の針は少しずつ、確実に動き出してきている。
萩の家族も綺麗に別れ、萩としてはもう散々だ。
何千年と生きてきた彼は、今更馬鹿げた戦争に加わる必要等なかった。
人は愚か、とはよく言ったものだ。
萩はどちらにも属さなかった。
どちらにも属していないとはいえ、時計は動かさないほうが良いと思う。
世界の時計は自然に動くもの、人工的に動かしては何が起こるのかは、萩にさえ分からなかった。
*****
くるすは空を見上げていた。
草原に、風が吹き、くるすの髪をなびかせた。
座り込み、もう一度上を向く。
雲ひとつない、空。
一点の穢れも無かった、彼。
空に、そして彼の瞳に移るのは、暖かかった家族のことだけ。
それに比べて、自分は如何だろう。
自嘲の笑みを浮かべ、笑う。
あの日、くるすは【DESPAIR】側、つまり時計を動かす側についた。
いつも家族の誰かに引っ付いてばかりいる自分から、逃げ出したかったのかも知れない。
今でも勿論、皆の事は好きだ。母のような包容力があって、祖母のようなあたたかさ、それに何でも話せる兄の様な存在があり、弟のような存在があった。
けれど、自分のせいで、家族は分裂してしまった。
今思えば、選ぶべきではなかった選択をしたのかも知れない。
「…ハハッ、馬鹿みたいだね」
「……何がですか?」
気がつくと背後にルビーが立っていた。
彼もまた、【DESPAIR】だった。
「‥ルビー、いつの間に来てたの?それより、何で此処が…」
「たった今です。それに、あなたの行動パターンは大体分かってますしね…。それより、何が馬鹿なんでしょう?世界ですか?人ですか?それとも、自分ですか?」
「…そっか。ルビーは凄いね、俺の思ってること全部当てちゃうしさ…そう、キミの言ったこと全部当てはまるよ。俺は、世界も人も…そして何より自分が馬鹿だと思う」
「あなたがそう思うのならばそうなのでしょう。しかし、もしも今、自分のしている事に疑いを持っているのであれば、その考えは捨てた方が良いでしょう。余計な事は、戦闘中には命取りですしね」
それはつまり、もう後戻りは許されないという意味なのだろうか。
あの頃には、もう戻れない。
「ゴメンネ、皆」
ぼそりと、謝罪の言葉を呟いた。
もう、後には引けないんだと、再度認識した。
「ルビー!戻ろう、きっと皆待ってるし!」
「それは如何でしょう?皆さん、そんなに優しい方ではないですし…」
「もしかしたら、だよ!サファイヤなら待っててくれるかもしれないし」
「さて、ね…」
くるすはルビーの手を掴むと、パチンと指を鳴らした。
ソレと共に、二人の姿は跡形も無く消えていた。
後に残ったのは草原だけ。風が草をなびかせているばかりだ。
02.終わりなど見えない
「…皆さん、忙しいのでしょうか‥?」
外を眺めながら、イヴは呟いた。
彼女が【HOPE】に入って3週間。あちら側-つまり【DESPAIR】側-に動きは無く、こちら側も何か仕掛けようとする気配は無かった。
彼女達【HOPE】の本拠地は、森空-正確には、森空の辺りに位置する異空間-にある。
本拠地とは言っても、自由奔放な者達が多いから、常に留まっているのはイヴと他数名に等しい。
エイダ-彼女はスパイ業も兼ねている-は、今朝方帰ってきたかと思えば朝食後にはもう姿が無かった。
大人数を収容するだけあって、屋内は大分広い。
そんな処に数人しか居ないとなると、流石に心細い。
「誰でも良いから、とりあえず早く帰ってきてください…」
ため息をつき、彼女はもう一度呟くのだった。
*****
カーテンの隙間から漏れる光が、やけに眩しい。
--どうやら寝過ごしてしまったようだ。
冥姫はベッドから降り、カーテンを開けようとしたが、あまりの眩しさに顔を顰め、もう一度キッチリと閉めなおした。
眩しすぎる光は、苦手だ。
もう一度眠りなおしたいが、そうはいかない。
【HOPE】側と硬直状態に陥ってもう1ヶ月…
そろそろ動かなければと思っていたところだ。
主要メンバー全員を集め、あちらの動向と、此方のこれからを決めておくべきだろう。
すばやく着替え終えると、冥姫は部屋を出た。
おそらく今日は、全員揃っているだろう。
--美名が部屋に閉じこもっていなくて、くるすがふらふらと出歩いていなければの話だが。
「…全員、揃った?」
蝋燭の光だけしかないホールの中央で、冥姫は言った。
答えは返ってこない。
所々に見える人影は、てんで勝手な場所に突っ立って-しゃがんで-いる。
冥姫は無表情のまま続ける。
「そろそろこちら側から仕掛けるべきだと思うんだ」
同じ場所にあった人影がゆらりと動く。
蝋燭の明かりが、赤に濡れた鎌に反射し、辺りを照らし出した。
「‥僕達が行きますよ。どうせ今回も雑魚ばかりなのでしょう?ねぇ、サファイヤ兄さん」
「…良いだろう。あまり気は進まないがな…あちらには商売仲間の刳琉斗が居る…」
「……そーゆうコト言う人って、油断してやられるのがオチだよね」
「冥姫、そう仰らないで下さい。兄さんも!この時世です。仕方の無いことと割り切ってもらわないと」
「…フン、まあ良い。許可が下りるのならば、さっさと行くぞ、久々の獲物だ」
「だ、そうですよ、冥姫。宜しいですか?」
「‥良いよ。ついでにあっちの情勢も探ってきて」
「分かりました。…くるす、アナタはどうしますか?」
愛想笑いを浮かべたまま、ルビーは壁の隅に寄りかかっていたくるすに声をかけた。
彼は俯いたまま、搾り出すように言った。
「…俺は遠慮しとくよ」
「…そうですか、では」
言うと同時に、2人の死神はその場から姿を消した。
「…俺達の戦いに、終わりなんて見えない。…どうしたらイイの?くるクン…」
03.これで上手くいくのなら
その日の森空には、小雨が降り続いていた。
建物も、人も、全てにおいて白く濁らせている。
空間を無理やり歪めたかの様に、濁った灰色の景色が歪む。
歪んだ空間に亀裂が走り、更に亀裂を広げるように2つの大鎌が出現した。
ルビーとサファイヤだった。
「雨ですか」
「仕方ないだろう。それとも、天候の時計の針でもずらしてくるか?もっとも、時計塔のに、そう簡単に近づけるとも思わないがな」
明らかに不快そうに顔を顰めるルビーを、サファイヤがたしなめる。
「‥別にそんな事を言いたい訳じゃないですよ、サファイヤ兄さん。……そんなことより今は【HOPE】です。奴等がどこに居るのか分からない以上、手の打ち様がありませんが…」
「簡単な事だ。町を壊してしまえばいい。奴等はこの世界を気に入っているからこそ、時計を止めたままにしようとする。だからこそ、町が破壊されるのも黙って見てはいられない筈だ」
どこか楽しげに、サファイヤは軽く鎌を振るった。
強大な衝撃波が、灰色の景色を襲う。
町の崩壊は、始まったばかりだ。
*****
雨は、好きだった。
つい先ごろまで家族だった青年は、嫌いといっていたが、何もかも洗い流してくれる気がして、雨の日は傘を持たず、出かけた。
びしょ濡れになって帰ってきては、くるすと萩に風呂場まで連行されたものだ。
そんな些細な事を思い出して、刳琉斗は笑った。
取り出していた家族写真を、雨に濡れないよう、しまいなおし、歩き出す。
--どこぞの緑髪外出少年ではないが、刳琉斗も最近は外出が多く、あまり帰る事が無かったから顔見せ程度にでもと思ったのだ。
顔に雨が当たるのが気持ちいい。
灰色の雲に覆われた空を見上げながら歩いていると、町のほうから爆発音のような音が聞こえた。
嫌な予感がする。
濡れた髪を掻き分け、一気に加速する。
煙が上がっていた。
【DESPAIR】だろうか、否、そうなのだろう。
アイツじゃない、アイツじゃない、アイツじゃない!!
家族だった少年を思い出しては否定しながら走り続ける。
上空に、2つの人影が見えた。
一つは見覚えがある。
サファイヤ、つまりは商売仲間だった者だ。
確か、弟と2人、アチラ側に行ってしまっていた。
自分の小型銃に弾丸を込め、照準を合わせる。
狙いは上空に浮かぶ人影。
「これで上手くいくのなら…くだんねぇ事考えるのは命取りだよな‥くたばっちまえ!」
引き金を引いた。
銃弾は勢いよく飛び出し、まっすぐ2人に向かっていく。
仕留めたと確信した瞬間、2人に当たるはずだった銃弾がはじかれ、地に落ちた。
何者かによって遮られたのだと思い、刳琉斗はもう一度引き金を引こうとした手を止めた。
「…イヴ、何のつもりだ」
「………」
純白の剣の柄を握り締め、イブは俯いている。
刳琉斗は続けた。
「あいつ等を止めるには、もう壊すしかねぇんだよ!!…人も、物もな」
「それでもっ!!」
怒鳴る刳琉斗に負けじとイヴも言い返す。
「アレが私のお兄ちゃん達であることに、変わりは無いんです…」
瞳を見開き、驚愕の表情で己を見つめてくる刳琉斗に視線を合わせ、もう一度きっぱりと言った。
「…身内の不祥事は、身内がつけます。刳琉斗さんは、手を出さないで下さいっ!」
「え、ちょっ…おい!」
イヴの手中にあった剣は、溶けるようにその姿を変え、大鎌へと変化した。
普段は隠れている翼を広げ、2人に向かって飛んでいく。
そんなイヴを、刳琉斗は黙って見ているしかなかった。
04.他の犠牲者達
幸い、兄達はイヴに気づいていない。
イヴは力の限り鎌を振るった。
衝撃波が、眼には見えない速さで2人を襲う。
奇襲は成功したかに見えたが、ルビーが素早く自らの鎌で防ぎ、別方向に薙ぎ払ってしまった。
「…イヴ、何の真似ですか?あなたはこの戦争に関係ないでしょう」
「関係なくない!私は【HOPE】に入ったの!」
「…なんだと?」
イヴの叫びに、ルビーとサファイヤは唖然とした。
自分達の妹は、争いごとが嫌いだったはずだ。
それが何故こんな戦火の真っ只中に好き好んで飛び込んでくるのだろう。
依然、唖然としたままの2人に、イヴは眼を閉じもう一度鎌を振るった。
兄への思いと、後悔の念と、罪悪感とを乗せて。
この距離なら、確実に仕留められるだろう。
「お兄ちゃん達のせいで、苦しんでる人達が居るの…!だから、終わらせなきゃっ!!」
チリン…
イヴの叫びに重なり、鈴の音が響いた。
*****
静かに瞼を開くと、目の前には赤い着物の青年と白銀色の髪が印象的な少女…否、少年が浮かんでいた。
攻撃があたる寸前に割り込み、跳ね返したらしい。
「…こんな街中でなにやってるの?」
静かに、けれど威圧的な口調で青年は聴いた。
隣の少年は、タバコをくわえながら煙を上げる町を見下ろしている。
「あ、貴方達は…」
「なにやってるのって聴いてるんだけど」
「それは……」
「戦だ。そいつ等が動かなかったので此方が動いただけのこと」
口ごもるイヴに変わり、サファイヤが口を開く。
薄い笑みを顔に張り付かせて。
青年はため息を吐き、俯く。
「そう…まったく、コレだから人っていうのは‥他人の事を考えようとしない。他の犠牲者が居るって分かってるくせに……そういえば、其処のお2人、死神みたいだけど如何なのかな」
「…そうですね、僕らは死神です。それが何か?」
ルビーが威嚇するように答えた。
萩は苦笑いし、悠長に煙草をすっている隣の少年-後ろに浮かんだ少女かも知れない-を見やった。
「別に。けど、隣に居るのは大天使サマだしね」
「萩、それ皮肉?それとも僕に喧嘩売ってるのかな。‥買うよ?」
「冗談。十分な装備もしないで雪音に勝てる訳ないだろ」
「二人ともいい加減にしなさい。周りの皆さんが困ってるわ」
「…雪那姉が言うなら」
少女、雪那の一言で雪音は萩に突っかかるのをやめると、改めて周りを見渡し、ルビーとサファイヤに眼を止めた。
「君たちが、死神だよね?」
「だからどうしたと言っている」
「僕、天使だからね。死神となんて関わる事めったにでしょ?だからお手合わせ願いたいなー、なんて」
言うと同時に自らの手の中に弓を出現させ、矢を射った。
直後、弓を大鎌へと変化させる。
「君たちのと似てるよね、僕の武器」
素早く間合いを詰め、鎌を振るおうとした時、雪那の声が響いた。
「その辺でやめて、雪音」
数センチで相手の首を捕らえるという所で雪音の大鎌はピタリと止まる。
それと共にルビーが叫んだ。
「兄さん、退却です!!」
「チッ!仕方が無い!」
大鎌で空間に亀裂を作ると、其処に溶けるように2人は消えた。
残されたのは萩と雪音に雪那、それにイヴと刳琉斗だけだった。
05.ここにいたくない
静寂がその場を支配する。
しばらく睨み合っていたが、先に口を開いたのは刳琉斗だった。
「萩…だよな?」
刳琉斗の問いに、萩は薄く微笑み答えた。
「それ以外の何かに見えるかな?」
「マジだよな、マジで萩だよな!?お前今まで何処居たんだよ!‥アイツみてーにアッチ行っちまったのかと思った…」
「…大丈夫。俺は行ってないし、行くつもりも無い」
「けど、コッチに居るんだよね」
「コッチ…?」
意味深に呟いた雪音の言葉に、刳琉斗は眉間に皺を寄せ、聞き返す。
「だから、萩はアッチには居ないし、そっちには居ないけど、コッチには居るって意味。【NEUTRALITY】…中立の立場に居る者たちだよ。僕と雪那姉もこっち側」
さも楽しそうに雪音は言う。
それに対して萩は困ったように笑い、口を開いた。
「俺達は戦争に参加するつもりは無い。…でも、出来ることなら止めたいって思って戦うこともあるんだよ。矛盾してるけどね」
「じゃあ…じゃあ貴方達は自分達の気まぐれで戦うってことですか!?私達は世界の為に戦っているのに…」
それまで黙っていたイヴが、必死の形相で叫ぶ。
雪音の後ろに浮かんでいた雪那は、静かにイヴを一瞥し、言った。
「そんなの、あなたたちの勝手な言い分でしょう?僕達にしたら、僕達のしていることが世界のためだと思うのだから」
*****
相変わらず薄暗いホールに、2つの人影が戻ってきた。
「…只今戻りました」
「………」
声の調子から、かなり切羽詰っているようだ。
いつも冷静な彼等にしては珍しい。
しかも、今回はかなりの短時間で帰ってきた。
--何か、あったね。
冥姫は静かに口を開いた。
「…お帰り。今回はずいぶんと早いんだね。…何か、あったでしょう?」
「‥ッ!」
何もかもを見透かしたような冥姫に、サファイヤは眉間に皺を寄せ忌々しげに舌打ちする。
そんな双子の兄を横目に見ながら、ルビーも顔を顰めたがすぐにいつもの表情に戻り、淡々と答える。
「……えぇ、僕達にしては迂闊でした。【中立】を名乗る者達が現れましてね…してやられましたよ、雑魚ばかりだと思っていたのに…」
ルビーの隣では、相変わらずサファイヤが忌々しげな顔で立っていた。
戦闘中に逃げ出したのが、彼にとってはよほどの屈辱だったのだろう。
「それで?何かアッチに動きはあった?」
「いや。刳琉斗と【中立】のリーダーらしき者は何か関わりがあるようだったがな」
「そう…君たちはもう、下がっていいよ」
「なっ!?」
「どの道精神的にもダメージ受けたみたいだし、しばらく休まないと戦えそうにないもの」
「…分かりました、従いましょう。兄さん」
「我はまだ戦えるッ!!」
「奴等の動きを見たでしょう!並みの人間ではありません!戦略を立て直さなければ勝てない!!」
「……チッ」
サファイヤは、まれにしか見ない激情する弟を一瞥し、再び舌打ちすると、その場の闇に溶けるようにして消えた。
後を追うようにルビーの姿も掻き消える。
「さて…もう少し様子を見たいな。誰か行ってくれる?」
問いかける冥姫の声を聞き流しつつ、くるすは眼を閉じた。
「ここにいたくない」
「!?…紫苑、何?」
「そう、顔に書いてあったけど」
何時の間に移動してきたのか、紫苑がくるすの隣に居た。
いつもおとなしく、無口な紫苑が薄く笑っている。
その瞳には、冷たい何かが確かに宿っていた。
「別に。そんな事、思ってない」
「嘘。…冥姫を裏切るようなことをしたら、許さないよ」
驚いたように隣を振り返ると、紫苑は既に其処には居なかった。
自分達が話している間に、話は進んでしまっていたようだった。
「それじゃあ…美名とカヂリ、それに蜜姫。お願いできる?」
「えぇ。殺菌消毒してきてあげる」
「ボクに向けた世界の不快、全部逆流させちゃうの★」
「俺の部屋で生きてられる奴なんか居ないだろ?」
--早く争いが終われば良い。
戦争を起こしている張本人ではあるけれど、くるすは必死でそれを願った。
…時計がある限り、決して叶わぬ願いだったけれど。
06.まだだ